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仏教質問箱布教誌『宝塔』に連載中の「仏教質問箱」より

「普門品偈」と観音さま

佐古弘文

 「普門品偈」は、くわしくは「妙法蓮華経観世音菩薩普門品偈」の略称であります。「世尊妙相具」と唱え始めますので、別名「世尊偈」とも呼ばれます。この経文をすべてそらんずるかたもおられましょう。それもそのはず「妙法蓮華経観世音菩薩普門品偈」は本来「観音経」という独立した一つの経典でした。

 西暦紀元後ほどなく「法華経」がまとめられるときとに「観音経」はその一章(羅什訳では第二十五章)に編入されました。当時のインドでは、観音信仰がとてもさかんでした。「法華経」を信奉する人々はこれはすばらしい教えだと、その観音信仰をたくみにみずからの教説のひとつにとり入れました。その観音信仰が「観音経」すなわち「観世音菩薩普門品」となったのです。前半は散文で書かれ、後半は詩(偈)であらわされています。従って偈文の部分を「普門品偈」と申します。

 「観世音菩薩」と申しますのは、わたくしたちにとても親しい観音さまの正式なお名前です。その意味は、「この世のなかの人々の苦しみ悩む音声をつぶさに観察して、かれらの苦悩の限りなき救済を誓願とする菩薩」というほどにご理解ください。また普門とは、「あらゆる方向に顔を向けた者」という意味です。観音さまはあらゆる方向や場所で苦しみ悩む人々を救わんとされるからです。わたくしたちはときとして、「救われたい!」と心から思うことがあります。ことが順調に運んでいるときは、神や仏を思いうかべることすらまれなのに、心のうちになにかしらわだかまりができると、それがだんだんと広がり、かつ大きくなっていきます。どうにもやりきれなくなります。大声で叫びたくなります。「助けてくれ!」と。そんなときは「救われたい!」と、ほんとうに思うものです。

 そのようなとき、「観音さまの力を心に念じ、観音さまの名号を口に唱えなさい。南無観世音菩薩と一心に祈りなさい」とお経は教えさとしています。なんとなれば、「観音の行は善く諸の方所に応じている(汝聴観音行善応諸方所)」からです。

 観音さまはまた、それぞれの人に応じでみずからの姿をさまざまに変えて教えを説き、かれらの苦しみ悩みを救いとる菩薩ともいわれています。それを「変化観音」といいます。三十三種(三十三観音)あるといいます。わが国ではその変化観音像を安置するお寺も多く見られます。たとえば奈良の法隆寺の夢違い観音、京都の三十三間堂の千手千眼観音像群、滋賀の向源寺の十一面観音、大阪の観心寺の如意輪観音、鎌倉の東慶寺の水月観音などは特に有名です。

 「かんのん」ということばのもつ響きは、わたくしたち日本人に限りなきやすらぎとなつかしさを与えつづけてきました。「観世音菩薩普門品偈」を心しずかに読みあげ、観音さまを念じてあらぶる心をしずめ、またしずみがちな心をはげますよすがとしましょう。    

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