日蓮大聖人のおことば 布教誌『宝塔』に連載中の「日蓮大聖人聖訓カレンダー解説」より解説者の役職・所属寺院名などは掲載当時のもの
人の寿命は無常なり
解説:学林教授・大久保 本修寺住職 田中 靖隆
虫の音が秋の訪れを感じさせる九月のお言葉は、ご主人を亡くされた妙法尼へ宛てられたお手紙からです。
人の命は尊く、そして儚いことを教示されたこのご聖訓は、『法華宗おつとめ要典』(六九頁)にも載る、とても有名な一節です。私も枕経や納棺、お通夜のお勤めの際に拝読いたしています。
老いも若いも死には定めはありません。この一節は仏教そのもののテーマであります。
お釈迦さまが出家されたのも、人が生老病死の苦しみから逃れることができるようになるにはどうしたらよいか、という問いへの答えを見つけるためでした。
大聖人も、全ての人々にいつ死が訪れるかわからないし、その苦しみや恐怖から逃れることができません。だから、他のことを学ぶ以前に臨終(死)について習わなければいけないと仰っています。
僧侶である私は、人さまより多くの葬儀に伺います。葬儀というのは悲しい別れの儀式である一方、故人がどんな人生を歩まれたのか、生きている人たちにどんなメッセージを残したのか、どんなことをしてもらったのか、感謝をしながら思い出を語り、「死」や「生きる」ということについて考えるよい機会にもなると思います。
こんな風に死を迎えたい、ということを考えると、どんな風に人生を送るかというヒントになるように感じます。