日蓮大聖人のおことば 布教誌『宝塔』に連載中の「日蓮大聖人聖訓カレンダー解説」より解説者の役職・所属寺院名などは掲載当時のもの
法華経を信ずる人は冬のごとし冬は必ず春となる
解説:学林教授・大久保 本修寺住職 田中 靖隆
法華経を信ずる人はさながら寒さ厳しい冬のようであります。ですが冬は必ず暖かな春を迎えます。
今年最後のお言葉は、建治 元年(一二七五)五月、身延の大聖人へ衣を贈られた妙一尼への感謝のお手紙からのとても有名なご聖訓です。
妙一尼のご主人は妻と幼子を残し先立ちます。夫を失った悲しみ、女手一つで子どもを抱えて途方に暮れ、まるで真冬に着るものなく、母子が寒さに身を寄せているようだったはずです。大聖人はこんな妙一尼の悲嘆に深く共感し、寄り添います。
百歳を超えて現役の医師の日野原重明先生は「耐えて待つ」ということを仰っています。
そして、仏さまのおっしゃる「世の中にあるものは、ずっと同じ姿ではいられない」ということを仏教用語で「無常」といいます。
今、何か辛いことを抱えておられる方は、少し前と今を比べてみてください。事態はよくなっているかもしれません、悪くなっているかもしれません。ですが、全く同じ状況ではないのでしょうか。事態がよい方向に進むまで、「耐えながら待ち、待ちながら耐え」ます。
しかし、それもまた辛いことです。何時その状況が終わるか解らないし、よい方向に進まないかもしれないからです。そんな時の頓服薬は「希望」です。
どんなことでも構いません。新しい薬が効くとよいな、あの人と話せるようになるとよいな、外に出られるようになるかな、少しでもお金が入るかなあ・・・。
仏さまは、こうも仰っています。例えば七人の子のうち一人が病になった。父母の心は平等でないわけではないが、病の子に対しては一番多く心を注ぐものなのですよ、と。
妙一尼のように辛い状況にある方も仏さまからすれば「病にある子」です。とりわけ仏さまはそのような方を心配し、二十四時間守ってくださると大聖人は示されています。今、辛い状況におられる方、必ず仏さまは心配し、見守ってくださっています。