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日蓮大聖人のおことば 布教誌『宝塔』に連載中の「日蓮大聖人聖訓カレンダー解説」より解説者の役職・所属寺院名などは掲載当時のもの

ほととぎすにつけての御ひとこえありがたし ありがたし

解説:学林教授・大久保  本修寺住職 田中 靖隆

ほととぎすにつけての御ひとこえありがたし ありがたし

 今月の一文は窪尼という女性檀信徒からの供養の品々に対する大聖人のお礼状からのお言葉です。

 ちまきに竹の子、それに美酒一筒。ほととぎすの鳴く一声に誘われての訪れ、ありがたい。まことにありがたい。

 大聖人は今の私たち僧侶と同じように、皆さまからのお心づかいで命をつないでいらっしゃいました。文永十一年(一二七四)に身延に入山し、体調を崩し下山するまでの約九年間におよそ五十三回、供養の品が全国の檀信徒から届いたことが大聖人のお礼状からわかっています。例えば

春: 麦・粟・焼き米(保存が効く)・干し芋・わかめ・ちまき(節句用)
夏: 芋・大豆・塩(貴重品)・干飯・のり・枝豆・ごぼう・ひじき
秋: 米・餅・酒・みかん・こんにゃく・山芋・みそ(貴重品)・柿・栗・ざくろ
冬: 大根・油・酢・串柿(串に柿を刺して干したもの)・八つがしら(芋の一種)

などです。このように書くと沢山あるように感じますが、その頃は天候不順できんがつづいていたので、何カ月も何も届かないという時もありました。手紙にも「けかち(飢渇)」、「食へて命すでに終はり」と、いつも食物が不足している様子が書いてあります。

 また、女性はこの頃から甘い物が好きであったのか、飴桶(麦から作った飴を桶に詰めたもの)や甘酒を送っていたのは女性だけです。

 大聖人に召し上がってもらいたいという心は、親が子どもに食べさせたい、家族が病人に食べさせたい、今困っている知り合いに食べさせたい、喜ばせたいという心であり仏心につながるものではないでしょうか。だからこそ〝ほととぎすの声〟とも感じられたのではないかと思います。

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