日蓮大聖人のおことば 布教誌『宝塔』に連載中の「日蓮大聖人聖訓カレンダー解説」より解説者の役職・所属寺院名などは掲載当時のもの
行学の二道をはげみ候べし行学たえなば佛法はあるべからず
解説:学林教授・大久保 本修寺住職 田中 靖隆
文永十年(一二七三)佐渡の塚原から一谷に移られた大聖人が弟子最蓮房へ宛てた『諸法実相鈔』の結びの一節です。
行と学の二つに励まなければ、悟りに近づくことはできない、と書いてあります。
行とは仏法における「行動の修行」、体を使った実践的修行と考えます。例えば、お経を読むこと(読経)、掃除すること(浄行)、自分が勉強した仏の教えを他の人に話すこと(説法)などです。一方の学とは学問の修行を指します。
この手紙をもらった最蓮房は、もともと天台宗の優秀な僧侶で、法華経の教えに精通したお弟子でした。だからこそ大聖人は頭でっかちではいけないよ、一つでも智識を得たのなら(学)、一人でも多くにその教えを説いて(行)差し上げなさいと諭され、「行と学」両輪相まって初めて悟りに近づくのだよ、とお示しになりました。
現代も知識偏重の世の中です。知識や教養は、家族やあるいは社会に出て、他の人の為に活かすことができてこそのものではないでしょうか。知っていることと実践できることの差を実感すること、行の中からもたくさん学べることなど、現代の私たちにも教えてくださっています。
法華宗の青年僧も、春から初夏にかけて総本山本成寺の学林で修行し、この行学の二道に励みます。
行の面においては早朝からの朝勤、浄行、練経(お経の練習)、法式作法。学の面では法華経の教義、天台学、大聖人の御書などを勉強します。学林を終えてようやくスタートラインに立つわけですが、行学修行の道は一生つづきます。